王子様はハチミツ色の嘘をつく
「自分は、泣いたらお父様に叱られてしまうから……?」
頼りない声で尋ねた私に、彼はふっと微笑んだ。
「ええ。まぁ、今となっては父に感謝していますけどね。窮地に立たされたとき、泣くより先に、そこから脱する術を考える方が先だと、父に教え込まれたからこそ、今の僕がある」
過去のことより、未来を見据えてきらきら輝く彼の瞳がとても綺麗で、私は話の流れに関係なく胸をときめかせてしまう。
同時に、やっぱりこの人の側にいたい、これから社長が成し遂げることを、一番近くで見守っていたいと願う気持ちが膨らむ。
「東郷社長」
急に改まって彼を呼んだ私を、彼が不思議そうに見つめる。
「私……今までは、社長に流されるまま、秘書のことも、その……恋愛のことも、自分の気持ちが定まってないようなところがあったんですけど……」
社長に惹かれていることを自覚しながら、創希さんとデートに出かけてしまったのも、きっとそのせい。
創希さんには本当に迷惑をかけてしまったけれど、彼のおかげで気が付けた、本当の気持ち。
恋愛経験もスキルもないからって、今までの自分は受け身すぎたよね。
でも、今なら――胸を張って、ちゃんと言える。
「私……社長のことが、好きです。だから、公私ともにあなたのパートナーになると言う約束……全力で、果たしたい」