王子様はハチミツ色の嘘をつく
しかし、僕が創希になりきるには、性格の根本に違いがありすぎて無理があったらしい。
最初こそ運命的なものを感じて従順だった美都が次第に違和感を覚え始めて、僕に探りを入れて来るようになった。
いつかは真実を告げなければならないとわかっていたが、そのタイミングは美都がもっと僕に落ちてからと決めていた。
それなのに、会議で重役たちに父のことを突っ込まれ、社長としての手腕も父の方が上だったというニュアンスの発言までされると、思った以上に僕はダメージを受けてしまい、美都に縋りたくなってしまった。
創希ではなく、本来の自分の姿で。
そして、正体を暴露しようとした矢先に、面倒な許嫁――蜂谷華乃の登場。
彼女は僕に迫るだけならまだしも、あろうことか美都に創希を紹介するという暴挙に出た。
……正直、僕は不安だった。
美都は、口では『今の私の王子様はあなただから』と言ってくれはしたが、それは弱った僕に気を遣って出た言葉なのではないか。
本当の初恋の相手、創希に再会してしまったら、その気持ちは180度引っくり返ってしまうのではないかと。