王子様はハチミツ色の嘘をつく
切実に訴えると、上倉が私にこう尋ねる。
「……じゃあ、今はそのソーキさんってのとは、会ってないんだ?」
「あ。えと……仕事のことでは、ときどき」
正直に白状すると、頭上からため息が降ってくる。
だって、本当のことなんだもん……。
百周年記念式典で、静也さんがご両親を喜ばせるために用意しているサプライズにも、創希さんの存在は必要不可欠。
その打ち合わせもあり、週に数回は顔を合わせているのだ。
「……あーあ。美都さんが悪い女になっちゃった」
がっかりしたような口調で言われて、私は少しムッとして言い返す。
「やめてよ、そんな言い方……」
「……ゴメン。俺もさ、さっさと美都さんのこと諦めて次いければこんな風になんないと思うんだけど……正直、まだ全然引きずってて。だから、美都さんの周りうろちょろしてる男のことは、みんなムカつくっていうか、目障りっていうか。でも、勝てる気もしねぇから、完全に八つ当たり」
苛つきと、それから自嘲も混じった上倉の震える声に、私の胸がズキンと痛む。
「若名さんは? プラネタリウムで彼女と一緒にいたけど、あれはデートじゃなかったの?」
「ああ……アイツも馬鹿だよね。美都さんにフラれて以来俺が元気ないからって、俺のこと無理やり連れ出して、ずっと空回ってた」
馬鹿にしたような言い方が彼らしくなくて、私は思わず口を挟む。