王子様はハチミツ色の嘘をつく
「彼女、きっと上倉のこと本気で心配して……」
「わかってるよ。つーか、空回ってんのは今の俺も同じだし……アイツ見てると、自分を見てるようですげー痛いんだ。だからこそ、一緒にいたくない」
「そ、っか……」
そういう理由があるのなら、私はこれ以上何も言えない。
しかも、二人とも私のせいで悩ませてしまっていると思うと、申し訳なさで胸がいっぱいになる。
「美都さん」
視線を床に落としていた私を、上倉が改めて呼んだ。
ゆっくり顔を上げると、思いつめたような上倉の表情がそこにあって。
「……どうやったら諦められるかって、色々考えたけど」
ぼそりと呟いたかと思うと、数歩私の方に近付いてきた上倉が、私を棚の方に追い詰めた。
「上倉……?」
「美都さんに、けーべつされれば、いい加減諦めつくかも」
軽蔑……? 私が、上倉を? そんなこと、するわけ……って、なんか距離近すぎない!?
「か、上倉、ちょっと、離れて」
「無理。……いただきます」
「え、ちょ、きゃ……っ!」
上倉は私の着ているシャツの襟元をぐいっと開くと、鎖骨のそばに唇を這わせる。
首から顎にかけて、彼の柔らかい茶髪がふわふわ当たって、くすぐったい。
上倉の腕を掴んで必死で抵抗を試みるも、びくともしなかった。
彼はその間に、唇を当てた部分を思いきり強く吸い上げた。