王子様はハチミツ色の嘘をつく
シャワーを浴びて、簡単な夕飯を済ませたあとは、ぼんやりテレビを見ていた。
でも、何を見ても頭には入って来ないし、テーブルの上の置いたスマホの方ばかりちらちら見てしまう。
そのままダラダラと時間を過ごし、日付が変わる頃にベッドにもぐりこんだ。
この時間まで連絡がないってことは、きっと大丈夫だったんだよね……?
目を閉じてもやっぱりそのことばかり考えてしまって、なかなか眠くならない。
気持ちを切り替えるように深呼吸をして、ごろんと寝返りを打った時だった。
夜更けにもかかわらず玄関のチャイムが鳴り、私はぱちっとまぶたを開けた。
……静也さん?
なんの根拠もないけれど、彼が来てくれたような気がして、ひたひたと廊下を歩いて玄関に向かう。
そして扉のロックを外し、ゆっくりとそこを開けてみると――。
「……すみません、非常識な時間に訪ねたりして」
そこにいたのは、疲労の滲んだ表情で弱々しく笑う静也さん。
きっと、今まで病院にいたのだろう。会社を出たときと変わらない服装だ。
私はドアを大きく開け、彼をすぐに部屋の中へ招き入れた。