王子様はハチミツ色の嘘をつく


シャワーを浴びて、簡単な夕飯を済ませたあとは、ぼんやりテレビを見ていた。

でも、何を見ても頭には入って来ないし、テーブルの上の置いたスマホの方ばかりちらちら見てしまう。

そのままダラダラと時間を過ごし、日付が変わる頃にベッドにもぐりこんだ。

この時間まで連絡がないってことは、きっと大丈夫だったんだよね……?

目を閉じてもやっぱりそのことばかり考えてしまって、なかなか眠くならない。

気持ちを切り替えるように深呼吸をして、ごろんと寝返りを打った時だった。

夜更けにもかかわらず玄関のチャイムが鳴り、私はぱちっとまぶたを開けた。

……静也さん?

なんの根拠もないけれど、彼が来てくれたような気がして、ひたひたと廊下を歩いて玄関に向かう。

そして扉のロックを外し、ゆっくりとそこを開けてみると――。


「……すみません、非常識な時間に訪ねたりして」


そこにいたのは、疲労の滲んだ表情で弱々しく笑う静也さん。

きっと、今まで病院にいたのだろう。会社を出たときと変わらない服装だ。

私はドアを大きく開け、彼をすぐに部屋の中へ招き入れた。



< 159 / 212 >

この作品をシェア

pagetop