王子様はハチミツ色の嘘をつく
「……私に、会いに来てくれたんですよね?」
静也さんはきっと、弱気な心を他人にさらけ出すことは恥ずかしいことだと、幼いころから教えられてきたんだ。
だから、本当の気持ちはつい隠してしまう。
それはきっと無意識で、癖のようなもの。
だったらこちらからあなたの心に潜り込んで、不安に寄り添いたいの。
「美都……」
私の名をつぶやいた彼は、しばらく何かを考えたあと、私の手首をつかむのをやめて、そうっと私の身体に体重を預けてきた。
私の耳のすぐわきに、うつぶせた静也さんの顔があって、彼はシーツに顔を押し付けたまま、くぐもった声で話す。
「“嘘はもう終わり”――と決めたはずなのに、僕はダメですね。しかも、あっさり見抜かれるなんて、格好悪いことこの上ない」
「静也さん……」
いつも、自分の周りを嘘の鎧で固めて、弱みを見せないようにするのは、きっと大変だし疲れることだよね。
それが彼にとって必要な嘘でも、私の前ではその重たい鎧を脱いでほしい。
私にはいつでも、本当のあなたを見せてください――。
そんな願いを込めて、彼の頬に触れる。
身じろぎして横を向いた彼は、きらきら光る穏やかな瞳に私を映して、観念したように苦笑した。
「正直なことを言うと、とても疲れていて眠いんです。きみの欲求に応えられないのが申し訳ないのですが、少し眠らせて……?」
話しているそばから、静也さんの瞬きがゆっくり、とろんとしたものに変わっていく。