王子様はハチミツ色の嘘をつく
まったく深見らしくない、なんの根拠もない台詞。
これが仕事のことならば、秘書課の長として失格だと、僕は苦言を呈したところだろう。
しかし、どうしてか今の僕の心にはストンと落ち、即座に頷いた。
この僕が美都を見つけられないはずがない。僕たちは、初恋をも超えた運命の相手なのだから。
そんな自信を取り戻させてくれた深見に感謝する反面、どうしても彼の意外な姿を茶化さずにいられない。
「……きみは意外とロマンチストなんですね」
「いえ、私ではなく……藍川の受け売りです」
藍川涼子……秘書課の主任で、深見の部下、か。
言いにくそうにぼそぼそ話す深見を見ていたら、思わず二人の関係をつつきたくなった。
「きみたちは交際しているのですか?」
「いえ、私が一方的に……って、社長! そんなことはどうでもいいんです! 早く芹沢さんを!」
「ええ。……そうですね」
普段の深見は、与えられた業務をこちらの求めていた以上の質にして、誰より速く確実にこなすサイボーグのような人間。
そんな彼の人間らしい姿を見られたことに思わず笑みをこぼして彼と別れると、僕はホテル内の捜索を開始した。
何度か彼女のスマホに連絡を試みたが、電源が入っていないのか充電が切れてしまったのか、やはり繋がることはなかった。
美都……きみはいったい今、どこにいる?