王子様はハチミツ色の嘘をつく
沈痛な面持ちで想いを吐き出していく若菜を、上倉は目を細めて静かに眺めている。
嫉妬、か。僕にも覚えのある感情ではあるが、それに任せてこんな風に他人を困らせていいはずがない。
「美都はどこです」
僕の短い問いかけに、若菜は涙声で答えた・
「北側の、廊下の端……空調機械室ってとこに、いるはずです。外から鍵をかけて、閉じ込めたので」
「マジかよ……」
ショックを受ける上倉と、涙をこぼして俯く若菜をのこして、僕はすぐに踵を返した。
歩きながらポケットのスマホを取り出し、時間を確認する。
予定していたパーティーの開始時間からもう二十分が過ぎようとしていて、僕はすぐさま深見に電話を掛けた。
「美頭の居場所がわかりました。本当なら僕が迎えに行きたいのですが、時間を無駄にはできない。僕は会場へ向かうので、彼女のことはお願いします」
『……承知いたしました』