王子様はハチミツ色の嘘をつく
「まさか、きみたち……」
静也さんがそう呟くと、華乃が創希さんの腕にぎゅっとしがみついてぴったり身を寄せた。
「えへへ、そのまさかでーす! 静也さんには振られたけど、美形遺伝子は創希さんにもばっちり備わっているし。東郷の血を引くパティシエっていうのも素敵かもと思って」
えーっと。いま、ひとつも気持ちのことが飛び出さなかったけど、私が聞き逃しただけかな?
静也さんに振られた代わりに、同レベルの容姿と家柄の良さを持つ創希さんで手を打った、っていう意味に思えてならないんだけど……。
「相変わらずですねきみは……。創希はそれでいいんですか?」
呆れた調子で静也さんが創希さんに問いかけるけれど、創希さんは不敵ににやりと笑う。
「このじゃじゃ馬お嬢様を手懐けるのって、すごいやりがいありそうじゃない? この子をいつか、美都ちゃんのように素直で従順な女にさせられたら――って妄想すると、ゾクゾクするんだよね。だから、お互いの利害は一致してるってわけ」
……やっぱり、創希さんって、そっちが本性か!
東郷の血筋って、嘘つきとドSが多いんだなぁ……なんて、変なところで納得してしまう。