王子様はハチミツ色の嘘をつく
「友達……なんですよね」
「え! 許嫁の子と!?」
ものすごい食いつきを見せる涼子さんに、黙って頷く。
「……それはこじれるわね。さすが社長。意地の悪さが尋常じゃないわ」
そこ、感心するところなんだ……。
やっぱり、社長の意地悪っぷりは筋金入りってことか。
それから涼子さんと料理を持って席に着き、食事を始めると、涼子さんがお茶碗を持ったまま深刻そうに切り出す。
「……そういえば。いくら意地悪なあの人でも、今日の会議ばかりはヤバいと思うのよね」
「え? どうしてですか?」
「資料、見たでしょ? あれは、社長を除いた重役全員の意思なのよ。バカ高い国産ハチミツを扱うのはもうやめましょうって」
そうなんだ……! でも、社長を除く――ってことは。
「社長は、それには反対してる……?」
ゆっくり確認するように涼子さんに問うと、涼子さんは口をもぐもぐさせながら頷く。
「そういうことね。昨日も、養蜂場に出かけていたでしょう? たぶんだけど、社内に国産ハチミツを排除しようとする動きがあるってことを説明しに行ったんじゃないかしら」
「な、なるほど……」
そんなこと言われたら、生産者の人も困るだろうな……。
彼がどんな風に話したのか、気になる。まさか、そういう場で意地の悪さは発揮してないとは思うけど。