王子様はハチミツ色の嘘をつく
「……大丈夫です。今の私の王子様は、あなただから」
社長の目をまっすぐに見つめて言えば、彼はほっとしたように息をついた。
そして、“ありがとう”と言うように私を再び抱き寄せ、唇に短いキスをくれた。
自然とまぶたを閉じ、唇が離れて行くのと同時に目を開けた私の前には、なぜか社長の意地悪な笑みがあった。
「僕の教えが身体に染みついてきたようですね」
え……? はっ! 私、今無意識に目を……!
「そっ……そういうわけじゃ!」
火がついたように熱くなった頬を両手で挟む。
でも、もしかして本当に社長の影響だったりして……?
ちら、と上目づかいで観察した彼の表情はどこか満足げで、私はますます恥ずかしくなるのだった。
*
「長くなりそうなので」と社長に促され、ソファの方にふたりで移動した。
そして並んで座り、ちょうど社長が口を開きかけたとき、彼のデスクの上で電話が鳴った。
社長はスッと立ち上がってデスクに向かい、電話を取る。その姿を、私はぼんやりと眺めていた。
「またですか……。でも、ちょうどいい。ここに美都もいるので、無理やりわからせてやりましょう」
え、私……? 自分の名前が飛び出したことに目を瞬かせていると、「では、一分後に」と短く告げた社長は電話を切ってこちらに戻ってきた。