海は悲しきものがたりいふ
「あ、そうそう、サッカー部の件やけど。」
「押し切られた?佐々木、粘り強いからな~。」
頼之さんはニヤニヤ笑いながら、光をくすぐって遊んでいる。

「えーとクラスに佐々木のことが好きな女の子がいてね、彼女の応援したいな~……なんて、ついおせっかい焼いてしもて……」
驚いた顔で頼之さんが私を見た。
「……で?」

「うん、その子、サッカーのルールは知っとーけどJリーガーとかは知らんらしくて、マネージャー試験落ちてんて。で、かわいそうやし、参謀助手に任命しちゃった。」
「じゃ、あおい、サッカー部に入部?」
「……微妙。私は入部したくないけど、彼女は入部させたげたい。どうしたらいい?」

頼之さんはちょっと笑った。
「ワガママな奴やな~。とりあえず、佐々木にそんな権限はないから、俺から部長とキャプテンに聞いてみるわ。」

そう言うと、頼之さんはすぐに電話をかけて、話を通してくれた。

ついでに佐々木から彼女、つまり由未ちゃん本人の携帯に電話連絡させるというサプライズ付きで。

やっぱり頼之さんは頼りになるなあ。
うっとりと見つめていると、頼之さんは光をベビーベッドに戻してから、私の隣に座って苦笑した。

「その目はあかんわ。理性飛ぶ。」
「え?そう?」

思わず両手で両目を隠して見せた。

「……隙だらけすぎて、心配になる。」

ため息まじりにそう言われて、慌てて手を目からはずした。
その手を両手で掴まれる。

「ほら、俺以外の男の前でそういうアホなことするなよ。」

そう言ってから、頼之さんはしっとりと唇を重ねた。
キス……された。

うわ~!!!

心の中で悶絶する。

ドキドキが止まらない。

「私、やっぱり頼之さんのこと、普通に好きみたい。」
考えなしの本音がこぼれ落ちた。

頼之さんは、目を見開いて、苦笑した。
「……そこからか!……今更やろ~~~。まあ、いいわ。俺は普通じゃなくて、めちゃくちゃあおいが好きやで。」
そう言って、頼之さんは私をぎゅーっと抱きしめた。


翌朝、由未ちゃんにめっちゃ感謝された。
まあ、私じゃなくて頼之さんのおかげなんやけどな~……と思いつつ話を合わせた。

ら、由未ちゃんは私をじーっと見て、ほうっとため息をついた。
「吉川さん、やっぱりめっちゃ綺麗……。」
お世辞じゃなくて、心からそう思ってくれてるのが伝わってきた。

「女子でそんな風に心から言ってくれる人、いいひんよ。うれしいわ、ありがとう。」
言ってて、泣けてきた。

私、女友達どころか敵ばっかりやったもんなあ。
この子となら仲良くなれそうな気がする。

はじめての女友達ゲット!

……やり直しの高校1年生は、思ってた以上に楽しくなりそうだ。
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