海は悲しきものがたりいふ
卯月なかばの山荘の宵
「はじめまして!吉川あおいと申します。今日はお骨折りいただいて、ありがとうございます!」
「え?……あれ……君……」
頼之さんのお父さまは、ぽかーんとして、私と頼之さんとマスターの顔を見た。
「あおい、逢うたことあるゆーとったな。」
光をあやしながら頼之さんがそう言うと、お父さまは今度は頼之さんと光を見て、泣きそうな顔になった。
「頼之くん。その子は、本当に君の子じゃないのかい?」
あーあ、お父さま、頼之さんの逆鱗に触れちゃった。
私は慌てて頼之さんの腕に触れて、怒らないよう窘めた。
マスターは、ニヤニヤしながら一部始終を楽しんで見ていた。
今日は、昨秋から約束していた須磨の別荘にお邪魔する日。
お父さまが直接、鍵を持ってきてくださるというので、ご挨拶させてもらうことにした。
「俺の子や。血は繋がってなくても、俺が父親や。俺が育てる。」
きっぱりそう言う頼之さんはとてもかっこいいけれど、お父さまにはやっぱり申し訳なかった。
お父さまは途方に暮れていたけれど、意を決したように光の顔を覗き込んだ。
「……かわいいな。」
「そんなありふれた言葉では表現できひんぐらい、な。」
頼之さんのイケズな物言いにお父さまは苦笑しながら、別荘の鍵を私に手渡した。
「ありがとうございます。お借りします。」
そう言って受け取ったが、本当に古いタイプの鍵から、セキュリティ会社のスティック状のものまでいくつもあった。
「いや、それは頼之くんの分。これからいつでも使ってくれていいから。でもあの別荘、会社では全く使ってないから、行く前にお掃除とベッドメーキングを頼んでから行くといいよ。今回はもうお願いしてあるから。」
ベッド!
ドキーンと私の心臓が反応した。
お父さまと別れて、頼之さんの車に乗り込んでから、恐る恐る聞いた。
「泊まるの?」
頼之さんは、ニッと笑った。
「あおい次第。」
……え~と……どうしよう。
もちろん嫌じゃないけど。
何かものすごく恥ずかしい。
まるで新婚旅行レベルで、双方の両親が知ってるわけだよね……今夜、別荘で2人……いや、光も一緒だから3人って。
いつまでも何の返事もできずモジモジしている私の頭を、頼之さんはポンポンと軽く叩くように撫でた。
「無理強いする気はないから、気にすんな。」
え~~~。
泣きそうになってしまった。
いや、頼之さんが紳士的なのも、気遣ってくれてるのもわかるけどさ……多少強引に来てくれないと……こちらとしては、そんなにあけすけにウェルカム!ってできるわけないのに。
「あおい?」
私はうるうると涙をいっぱい溜めた目で頼之さんを見つめた。
しばらくじ~~~っと目で訴える。
頼之さんが、眉を上げてため息をついた。
「……わかった。」
そう言って、頼之さんは車を出した。
どう伝わったのか、楽しみなような心配なような……。
「え?……あれ……君……」
頼之さんのお父さまは、ぽかーんとして、私と頼之さんとマスターの顔を見た。
「あおい、逢うたことあるゆーとったな。」
光をあやしながら頼之さんがそう言うと、お父さまは今度は頼之さんと光を見て、泣きそうな顔になった。
「頼之くん。その子は、本当に君の子じゃないのかい?」
あーあ、お父さま、頼之さんの逆鱗に触れちゃった。
私は慌てて頼之さんの腕に触れて、怒らないよう窘めた。
マスターは、ニヤニヤしながら一部始終を楽しんで見ていた。
今日は、昨秋から約束していた須磨の別荘にお邪魔する日。
お父さまが直接、鍵を持ってきてくださるというので、ご挨拶させてもらうことにした。
「俺の子や。血は繋がってなくても、俺が父親や。俺が育てる。」
きっぱりそう言う頼之さんはとてもかっこいいけれど、お父さまにはやっぱり申し訳なかった。
お父さまは途方に暮れていたけれど、意を決したように光の顔を覗き込んだ。
「……かわいいな。」
「そんなありふれた言葉では表現できひんぐらい、な。」
頼之さんのイケズな物言いにお父さまは苦笑しながら、別荘の鍵を私に手渡した。
「ありがとうございます。お借りします。」
そう言って受け取ったが、本当に古いタイプの鍵から、セキュリティ会社のスティック状のものまでいくつもあった。
「いや、それは頼之くんの分。これからいつでも使ってくれていいから。でもあの別荘、会社では全く使ってないから、行く前にお掃除とベッドメーキングを頼んでから行くといいよ。今回はもうお願いしてあるから。」
ベッド!
ドキーンと私の心臓が反応した。
お父さまと別れて、頼之さんの車に乗り込んでから、恐る恐る聞いた。
「泊まるの?」
頼之さんは、ニッと笑った。
「あおい次第。」
……え~と……どうしよう。
もちろん嫌じゃないけど。
何かものすごく恥ずかしい。
まるで新婚旅行レベルで、双方の両親が知ってるわけだよね……今夜、別荘で2人……いや、光も一緒だから3人って。
いつまでも何の返事もできずモジモジしている私の頭を、頼之さんはポンポンと軽く叩くように撫でた。
「無理強いする気はないから、気にすんな。」
え~~~。
泣きそうになってしまった。
いや、頼之さんが紳士的なのも、気遣ってくれてるのもわかるけどさ……多少強引に来てくれないと……こちらとしては、そんなにあけすけにウェルカム!ってできるわけないのに。
「あおい?」
私はうるうると涙をいっぱい溜めた目で頼之さんを見つめた。
しばらくじ~~~っと目で訴える。
頼之さんが、眉を上げてため息をついた。
「……わかった。」
そう言って、頼之さんは車を出した。
どう伝わったのか、楽しみなような心配なような……。