お気に入り同期と恋人ごっこ
夕方
玄関のチャイムの音がなった。
奥野さんが来てくれたんだと
喜んで出たあたしは
来客を見て現実を突きつけられた。
奥野さんじゃない
来たのは誠だった。
ホントの彼女だったら
こうして来てくれるんだろうけど
あたしたちの間ではそれはない。
「あ・・・誠」
「何だよ がっかりした顔すんなよ」
「別にがっかりはしてないよ」
「奥野さんなら最後だからと
捕まってて二次会行ったよ
あのペースなら三次会もあるかもな」
「誠はどうして帰ったの?」
「朱音に会いたかったから」
「もー!!!冗談はやめて!」
「会いたいと思ったのは嘘じゃないけど
心配だったからさ」
「あたしなら大丈夫だよ
ただの疲労だから
あたしって仕事師なもんで・・・」
「ばーか冗談言うな!
悩みがあるなら聞いてやるぞ」
「ありがとね
でも何にもないから」
と笑って見せた。
「あっ!!あがって」
「あれ?今日は追い返さないのか?
彼が来て鉢合わせしたらどーすんの?
って前みたいに言わないんだな」
今日は来ない!ってか
来るわけがないしね
二次会・三次会も行くって今
誠が言ってたし それにもう
もうあたしの役目は終わってるし。
「自分の送別会をしてもらってるのに
抜け出してくるとか
非常識なことできないでしょ」
「ふーんそーかな?
まぁ上がるわ」
誠は上がってきた
この時点で誠を返しておけば
ずっと普通に会社でも
いままで通り出来てたのに
あたしが上がらせたばかりに
問題が起きてしまうとは・・・。