お気に入り同期と恋人ごっこ


「待って!オレがそんな顔をされる意味が
わかんないんだけど!」


「よく言うよなお前!」


「もー!いいから!
奥野さん帰って!」


今度は奥野さんの背中を押すあたし。


誠に正直に言わなかったあたしの責任
言いたくなかった・・・
誠と別れてから恋愛してなくて
奥野さんにずっと一途だったってことを。


奥野さんはあたしの切迫詰まった表情に
「も~帰るわ!
気分悪いわ」と 帰っていった。


「朱音!お前遊ばれてたのか?」


「ここで話してたら誰か聞いたら不味いから
後でちゃんと話すから」


会社の人には知られたくなかったから
後で本当のことを話そうと思った。


残業で残っていた人はあたしたちが
一緒に帰っているのを見ても
別に不思議そうにもなかった。


「あー!!!上野さーん
えっ???この人は?
まさか彼氏とかじゃないよね?」


この人だけはそう言い方をした
それは・・・工藤さん。


「あ・・・」


「ふーんあなたも意外に恋多き女ね!
利用できる人は何でも利用するみたいね
あ~あ 奥野さんもあんなに
必死になって頑張ったのに
使うだけ使ったら後はこれだもんね
可哀想に・・・」


使うだけ使ったら?
Tシャツのこと?
工藤さんは 何か誤解しているようだ。


「君!ちょっといい?」


わっ!また誠が口を挟もうとする。


「いいから早く帰ろ
工藤さんまた今度ね」


「ふーんすごく余裕な態度!」


余裕なんてないのに・・・。






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