私が幸せになるまで。
そんな事があったのも忘れていたある日。
いつものように、母の財布から金を抜く。
「またそんな事してんのか。」
また、あの男が見ていた。
「なんだよいちいち。
うっぜぇな。
チクリてぇならチクれよ。」
きっと、あの人は何も言わない。
ただ、お金の場所を隠すだけだろう。
「マリ子(母)はとっくに知ってるよ。
証拠を見つけたら警察に突き出すと言っていたからね。」
また虚しさが、私を襲う。
「…証拠なんてねぇだろ。」
その男は、ボイスレコーダーを出し、この前の私たちの会話を再生した。
『今盗んだろ。お金。』
『とったよ。
で、なに?』
男は、ニヤリと笑った。