【完】恋のおまじないNo.1
海野か?




顔を上げ、人影の主を確認する。




…違う。




息せき切って、肩を激しく上下させているのは…桃ちゃんだ。




物陰にいる俺には、気づいてなさそう。




話しかけようか迷っていると、桃ちゃんが声をあげて、わああっと泣き始めた。




まっ…まじか。




そのまましゃがんで、顔を手で覆って泣いている。




恐る恐る近づくけど、なんて声をかけていいのかわかんねぇ。




けど、ゆめの友達だしな…見過ごすこともできなくて、桃ちゃんの前にしゃがみこんだ。




「…どした?」




ビクッと肩を震わせ、手の隙間から俺を確認している。




一瞬見えた、泣きはらした目を再び隠すように、桃ちゃんはすぐに俯いてしまった。




こんな姿、見られたくないよな。




話しかけない方がよかった?




声を押し殺し、肩を揺らして…まだ泣いてるんだろう。




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