野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)
市江さんの家は、森の中にあるコテージだった。


「ホントはね、山の暮らしがしたかったのよ。それが海坊主と結婚しちゃってね」

「…ハーブティーだ」

「口に合うかな?若い子に出すようなもの置いてなくって」


静かだけど、しーんとはしてない。

木がゆれて、鳥が鳴いていた。


「優斗くん、結婚するんじゃなかったのね?」

「しません」

「テレビないけど、ラジオは聴くのよ。オバサン、びっくりしてママに電話しちゃった」

「オレ、なにもかもどうでもよくなっちゃいました」

「あらら」

「強くなるには、どうしたらいいんですかね」


外を見た。


すげぇ雪つもってる。

雪なんか見たの、何年ぶり?



「うーん。どうしたらいいのかしらね」



自分が恥ずかしくなってきた。

市江さんなんか、ダンナも子供もなくしてんのに。
< 107 / 112 >

この作品をシェア

pagetop