野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)
「死んでやるっ!死んでやるっ!うううう恨んで!恨んで!死んでやるっ!!」
家族らしき人の慌てたような声が聞こえた。
「家に来なよって言って欲しい?」
僕は言った。
「だから電話してきたんだろ?」
言葉にならない声が聴こえて、
それは泣き声に変わったかと思うと唐突に電源が切れた。
「可愛いなぁ…分かりやす過ぎるだろ」
完全に夜が明けるまで、まだ少しあった。
ラジオをつけると、親父の好きな古いバンドの曲が流れだした。
最後に会ったのは、その1年後。
駅の構内だった。
大きくて武骨なトランクを小柄な女の子が引いて歩いていた。
「どこいくの?」
突然、声をかけられた花澄が驚いたように僕を見た。
ショートカットで、日に焼けている。
「もう行ってるの。うち引っ越すから、荷物取りに来たの」
「どこに?」
「石垣。お父さんの地元」
小麦色の腕に、ミンサー織のブレスレットが巻かれていた。
「行くね」
思わず、その腕を取った。
「行くな」
花澄が僕を見上げた。
懐かしい、昔遊んだ樹でも見るように。
「さよなら」
その言葉には、なんの裏もなかった。
ただの、ただの「さよなら」だった。
するりと腕が離れて行った。
いつからだろう。
僕はいつから、本気になったんだろう。
自分のことは、分からない。
家族らしき人の慌てたような声が聞こえた。
「家に来なよって言って欲しい?」
僕は言った。
「だから電話してきたんだろ?」
言葉にならない声が聴こえて、
それは泣き声に変わったかと思うと唐突に電源が切れた。
「可愛いなぁ…分かりやす過ぎるだろ」
完全に夜が明けるまで、まだ少しあった。
ラジオをつけると、親父の好きな古いバンドの曲が流れだした。
最後に会ったのは、その1年後。
駅の構内だった。
大きくて武骨なトランクを小柄な女の子が引いて歩いていた。
「どこいくの?」
突然、声をかけられた花澄が驚いたように僕を見た。
ショートカットで、日に焼けている。
「もう行ってるの。うち引っ越すから、荷物取りに来たの」
「どこに?」
「石垣。お父さんの地元」
小麦色の腕に、ミンサー織のブレスレットが巻かれていた。
「行くね」
思わず、その腕を取った。
「行くな」
花澄が僕を見上げた。
懐かしい、昔遊んだ樹でも見るように。
「さよなら」
その言葉には、なんの裏もなかった。
ただの、ただの「さよなら」だった。
するりと腕が離れて行った。
いつからだろう。
僕はいつから、本気になったんだろう。
自分のことは、分からない。