野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)
二日後には、父さんが病院へきた。


「メシ、食ったのか?」

「食った!足らねぇ」


ベッドから身を半分のりだし、腹筋を鍛えてる。

優斗は、ベッドでじっとしてられるようなヤツじゃない。


看護士さんも優斗の

「だって動いちゃうから、麻酔打ったらいいんすよ!ケツから打つんすか?銃で打つんデスヨネ?ニンゲン用もあるんすか?あとプロテインも強力なのが病院にはあるんすか?」

なんていう、どこまでテンネンか分からないボケに振り回されて、もうあきらめている。


だけど、それでも注意は怠らない。

入れ替わり立ち替わり、看護士さんがやって来る。

優斗はすでに病院のアイドルだった。


個室から大部屋に移って、一日中検査を受けたけど、アタマ以外に異常はないように見える。


僕は病室を出て、父さんと二人きりにした。


今日、話すつもりなのか分からないけど。


一階のコンビニで、優斗の好きな菓子パンを買った。


病室の中から、優斗の声がした。

「俺のせいじゃねーか!」


くぐもった父さんの声が、聞こえた。


「優斗が自分を責めると、母さんが傷つく」

「だけど俺のせいだろ!」

「お前は自分の体調のことを考えろ」


看護士さんがいそいそとやって来た。

「総史くーん。あんまりユウくんに甘やかしすぎはダメよ~?」


父さんが出てきた。

「帰る?」

「ああ、穂積と八雲の様子見てくる」

二人は親父の実家に預けられていた。


「ご厄介おかけしてます」

「いいえ~。ユウくーん、点滴ちょっと見せてくれるかなぁ?すっごく動くんだもん…あれ?どうしたぁ?眠い?」


僕も母さんの顔が見たい。
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