野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)
ケイイチロウが見つからないまま、二人の葬儀が行われた。


東京の大きな教会だった。


ブレイクは、父さんがバックパッカーをしていた時代からの友人で、
奧さんの市江さんと、一人息子のケイイチロウとは、
生まれたときから家族ぐるみの付き合いだった。



ブレイクって、こんな涼しい顔してたっけ?

いつも「夏にみたくない顔」って、からかってたのに。

父さんも母さんも泣いている。

それをあべこべに、痩せこけた市江さんが慰めていた。


母さんもまだ万全じゃない。


優斗を見た。

ときおり神妙な顔はするけど、せっかちなのは変わらない。


赤信号なのにガンガン渡ろうとするし、誘導されたのにさっさと親族席に座ろうとした。


式が始まった。


とつぜん、八雲の声が会場に響き渡った。


「うちの赤ちゃんも天国に行ったー?」

「ダメだよ、八雲っ」

穂積が叱ってる。


「天国は空より高いー?」

「静かにっ」

「ボールけったらどーなるの?」


笑いが起こった。

市江さんも笑っている。


父さんが八雲を抱えて、会場から出ていった。

顔を伏せる母さんに、穂積がハンカチを渡している。
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