野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)
帰国子女も考えもんだな…


アタマ痛くなってきた。


「僕の好きなのは、音楽です。前から好きなのは、ルイスアンドロメダですが、これとフォルクロレが一緒になったアルバムは最高です。次に好きなのはギターです」


これが高2の文章?

優斗か。


これを訂正するのに、一時間半じゃ足りない。


「今日はバイト?」

「あ、クビになっちゃった」

「なんで?」

「お客さんには『はい』って言わないといけないとか、申し明けありませんとか…ルールが多くて。だけど、なんか『うん』とか『ゴメンね』て言っちゃうんだよね」

「申し訳ありません…だね」

「日本てさ、そういうところあるよね。サービスってハートでしょ?アメリカでは…」


つまり敬語が話せなくてクビ。

英語ができるからって採用されたのに、肝心の日本語ができなくてクビ。


ドアがノックされ、母親が入ってきた。


「先生ぇ。休憩してぇ」


この人もアタマが痛い。

香水キツイ。


またこれか。せんべい状のクッキー。

手作りなんだけど、アメリカ仕込みで激甘い上にバターが多い。

妙なスパイスも大量に入っている。


「進んでますかぁ?」

「進んでません」

「うふ。先生のそういうハッキリしたところ頼もしい!しかも東大生で、こんなカッコイイ先生に来てもらえると思わなかった~~~!」


顔、関係ない。


「今のままじゃ志望大学は難しいですよ」

「でも帰国子女枠ですから…あとは文章のコツさえつかめば。ね、翔ちゃん?」

「先生!Take it easy!」



金を稼ぐって…大変なんだな…

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