野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)
車で家に着くと、リビングでは優斗がガツガツと水炊きを食っていた。


何やってんの、こいつ。


「ありがとう~。ああ、お兄ちゃん来てくれた~」

「優斗、帰ってたんだ」

「急に来たのよ。パパ居ないもんだから」


優斗は顔を上げて目で俺を確認すると、またフードファイトに戻った。


「あーあ、安心した。総史も食べて」

「うん」


優斗が立ち上がり、白飯をよそった。


よく食べるな…


母さんが疲れたように言った。

「あなた、あの女優さんと結婚するの?」


そうだった。

友達に教えられて、驚いたんだった。

同時に、茜ちゃんのことを思って…


「その話はしたくない」

「したくないって…挨拶も来てないじゃないの」


優斗は乱暴に立ち上がると、茶碗を片づけて風呂場へと消えていった。


「何なのかしら…」

「放っておいたら?」

「パパも放っておけって言うけど、だって結婚よ?」


会話が途切れた。

母さんも茜ちゃんのことを思い出してる。


スマホを出して見せた。


「見て」

「…茜ちゃん?茜ちゃんなの、これ?」

「年末に、幕張で偶然に会って」


母さんはスマホを抱くようにして、画像を見続けた。


「女の子は…ねえ。半年でこんなに変わっちゃうんだもん…もう優斗なんか子供っぽくて、相手にしてもらえないね…」


そんなこともないと思うけど…

「キッチンから、ずっとにらみ付けてるヤツいたよ。僕より上か…あれカレシじゃないかな」


母さんが名残惜しそうに、スマホを返した。

カラスの行水の優斗が、風呂から上がる音がしたからだ。


「優斗には、これ見せないでね。なんだか…無惨すぎるわ」

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