野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)
雨が降りだしていた。
ボクは気にならなかった。
電車に乗って、お祖父ちゃんたちの家に帰った。
「ただいま」も言わないで、体もふかないで、ピアノに向かった。
けん盤に指がふれたとたん、
いろんなことがスイスイ泳いでいった。
小学校のひび割れた壁、
迎えにきたとたん泣き出したママ、
イジメは犯罪だって言ってくれたパパ。
総史が勉強と空手を教えてくれて、
上総に逆上がりの特訓をさせられた。
引っ越しをして、
海で…
優斗が…
八雲とボクをサーフボードに乗っけてくれたり、
岩場からポンポン沖にほうり投げてくれた。
なんどもなんども
ボクらが飽きるまで、それをやってくれた。
そして茜ちゃんが来て、
ボクのことを「シショウ」って…
音のうずのなかをボクはどんどん進んでいった。
だれもしらない、
世界でたったひとつの波のなかを
ボクは進んで行く。
ここだ。
ここでいつも怖くなるんだ。
二度と浮かび上がれなくなる気がして。
だけど今日は行ってやる。
かならず出られる。
かならず、かならず…
目の前に光がみえた。
そこに向かって、夢中で進んでいった。
ふあああっと目の前が明るくなった。
もぐっていた海から、顔を出したときみたい。
ぷはあって空気を吸って、光がまぶしくて…
ーまた会える?ー
ー約束を守ったら、絶対に会えるよー
ボクは、
会えた。
ボクは気にならなかった。
電車に乗って、お祖父ちゃんたちの家に帰った。
「ただいま」も言わないで、体もふかないで、ピアノに向かった。
けん盤に指がふれたとたん、
いろんなことがスイスイ泳いでいった。
小学校のひび割れた壁、
迎えにきたとたん泣き出したママ、
イジメは犯罪だって言ってくれたパパ。
総史が勉強と空手を教えてくれて、
上総に逆上がりの特訓をさせられた。
引っ越しをして、
海で…
優斗が…
八雲とボクをサーフボードに乗っけてくれたり、
岩場からポンポン沖にほうり投げてくれた。
なんどもなんども
ボクらが飽きるまで、それをやってくれた。
そして茜ちゃんが来て、
ボクのことを「シショウ」って…
音のうずのなかをボクはどんどん進んでいった。
だれもしらない、
世界でたったひとつの波のなかを
ボクは進んで行く。
ここだ。
ここでいつも怖くなるんだ。
二度と浮かび上がれなくなる気がして。
だけど今日は行ってやる。
かならず出られる。
かならず、かならず…
目の前に光がみえた。
そこに向かって、夢中で進んでいった。
ふあああっと目の前が明るくなった。
もぐっていた海から、顔を出したときみたい。
ぷはあって空気を吸って、光がまぶしくて…
ーまた会える?ー
ー約束を守ったら、絶対に会えるよー
ボクは、
会えた。