野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)
おもいっきり風邪ひいちゃった。


寒い…


身体中がムサアアアアてして、

ノドがビンビコビンビコ痛んで、

セキがゲヘンゲヘン出て、

眠れなくって…




だ、だれがだずげて



「ほずみ」


だれ…


あ、ママだ。


ママがいる。



もうダメだ。


ボク、もう天国にいっちゃったんだ。



まだ、わかいのに…うう


おきのどくさま…



「穂積!」


はれ?


「穂積ぃ…ごめんねぇ遅くなってごめんねぇ…!」


ホンモノ?


「ボク、いきてますか?」

「生きてるよぉぉぉ」


お祖母ちゃんが入ってきた。


「ああ、もうやんなっちゃう。一日中、女の子たちから電話よ。学校にいる間はかけてくるんじゃありませんて、何回言ったかしら!」

「穂積ぃぃ…やっぱりモテるのねぇ」

「音楽家になれなくても、食べてはいけるわね」


体を起こしてもらって、水分を取った。


「八雲と千隼は…?」

かすれちゃって、変な声…


「退院したよ。もう大丈夫だって」

「じゃあ、もう帰らないとね…」


ママの目がうるうるした。


「ダイジョウブだよ…」


ママがボクを抱きしめた。


「ダイジョウブだよ。お祖父ちゃんもお祖母ちゃんもいるし、」


ママもいるし、パパもいる。

お兄ちゃんも弟もいる。


ボクの先に、ボクの後に、みんなみんな、いる。



優斗を許そう。

メンドウだけど。


ボクに起こったことも許そう。

イヤだけど。


アイツらは、なにも持ってない。

ボクから何もうばえなかった。


ただのビンボー人なんだ。



「ママのこと、愛してるよ」

「うわあーん!連れて帰りたいよぅ!」

「食いっぱぐれがないわね。それが一番大事よね」
< 55 / 112 >

この作品をシェア

pagetop