野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)
大会はサイコーに楽しい。


どっかにケイが居るような気がして、探してみる。


あの波を探して探して、

ブレイクの「ユート、…ゴー!」をイメージしているうちに、

ラインをつかめるようになった。


ケイが「ジョッシュはハデなだけ」って言ったから、

その逆ってなんだろうって考えながら練習した。


できる。

いくらでも、乗れる。

どんな波でも…オレ、天才!



優勝インタビューを受けながら、

アタマの中ではあの波と「ユート、…」を繰り返してる。


客が笑った。

オレ、なんか変なこと言った?


「そっちーじゃねーよ!」

「ゴールドだろぉ」


あ、まちがえて受け取っちゃった。


あ~!

サーフィン最高。



ユート、ゴー!



打ち上げしないで、ソッコーで家に帰った。


母さんに見せよう。

今日は、穂積も八雲も親父の実家に行ってていないんだ。


驚かせようと思って、静かに家に入った。


お茶飲んでる。



あのハーブティ…


湯気が出てなかった。

色もなかった。


ティーカップを前にして、母さんはなにもしていない。

首が少し横にたれ、肩が脱力しきって…


寝てもいない。

覚めてもいない。


なにも…してなかった。


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