野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)
そして、行ってしまった。


茜の家に。



オレ…

オレ、ストーカー?


こんな駅で降りる日が来るとは思わなかった。



マップを見ながら、大神宮の鳥居を横目に見て進んで行くと、古い木造の店の前に着いた。

店なのに、看板もない。


ガラス戸の向こうは、しーんとして海藻が積んであるのが見えた。


まだ学校やってる時間で、茜がいるわけない。



なにしに来たんだ。

オレにも分からない。


後ろから、人が来た。


オレをチラリとも見ないで、中に入って行こうとした。


「あ、あの!」


振り返った。

40代くらいの…

あ、ぜったいコノ人、茜のオヤジさんだ。


「オレ、茜さんの高校の同級生です」


この人、カラダ鍛えてる。

分かる。

立ち方が違う。


「あの…」


店からお婆さんが出てきた。

「あんがとよ。言ってくれりゃあ、取に行ったダ。あのクソジジィ、勝手に退院してきやがって!あんだいまったく。今どき病院でタバコなんか吸えねーのは当たりめぇじゃねぇか!医者も医者だ。検査したって分かりゃしねーダ。カネとることしかアタマにねぇッ」



まちがいない。

まちがいなく、茜のばーちゃんだ。


「ババァ!ババァ!これ、火にかけっぱなしじゃねーかよ!」

「てめぇが止めりゃあいいだろっ!」

ばーちゃんは、紙袋を受け取るとさっさと中へ入って行った。

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