野崎兄弟のThousand Leaves(あかねいろ Thousand Leaves!番外編)
「すっげぇよ!さすがユート!」

「ありがとございます」


スポンサー会社の山口さんが、オレをグシャグシャなでた。


「もうトリハダ!日本人が、あんな…あんな…嬉しい…嬉しいよ、オレ」

山口さんが泣きだした。


「オレ、おまえのためなら何でもする!」

「ありがとございます」

「とりあえず、腹へったろ!なんでも食わせてやる!何がいい!?」

「じゃあ、ホットドッグで」


みんなが笑った。

「もぉぉぉぉ~オマエ、そんなのでいいの~~?」

「さすがユート!だっはっはっは!」


サイン攻撃をテキトーに受けながら、

みんなで有名なホットドックの店に移動した。


「ユート、マスタードだけか?」

「え?いや…」


オレはもう一度、容器を手に取った。

「またマスタードかよっ。Wでマスタードつけて、どーすんだっって」

「おっまえは、ホントおもしろいヤツだな~!」

「まあ、テンサイってカミヒトエだから」

みんなが笑う。

オレもオカシイような気がしてくる。


ションベンしに外へ出ると、ジョッシュが電話していた。

「バカがバカのキゲン取りしてるよ。優勝したわけでもねぇのに…イヌみたいにスポンサーにシッポふって。つーか、オマエ早くカネ入れろよ!オマエ、それ以外になんのトリエがあんだよ!」


ジョッシュは、ムズカシイことばっか言ってんな。

昔は英語まじりだったけど、言ってることが分かったのに。

でも今は、怒ってばっかでよく分かんね。


ていうか、最近はみんなの言ってるコトバがよく分かんねぇ…



浜はまだ盛り上がっている。

エキシビジョンかな。



カミサマみたいなサーファーと、たくさん顔見知りになった。

気さくに声もかけてくれる。



カンチガイしそうになる。

もう届くって。


だけど、

本当は、オレとその人たちの間には80人のサーファーがいる。



「ランクなんてカンケーない。海を愛してるかどうかだ」


って、生きるレジェンドに言われた。


そうなんだけど。

それは誰にも負けないけど…

急に自分がちっぽけに思えてくる。
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