フルブラは恋で割って召し上がれ
「つがる、あやか、紅玉、スターキングでしょ? それから、ジョナゴールド、ふじ、陸奥、世界一」
別紙の回答と照らし合わせながら、梨花ちゃんの指の動きと答えを必死で追う私。
「……すっごい、全問正解!」
興奮気味の私とは打って変わって、きょとんとした顔で私を見ている梨花ちゃん。
「青森の子なら、みんなわかるよー。りんご、大好きだもん」
その言葉に、私は眼から鱗が落ちた思い。
研修って言葉が枷になっちゃってて、覚えなきゃ覚えなきゃって気持ちばかりが焦ってたんだってことに気付いたの。
私だって、元々フルーツは大好きじゃない!
お菓子作りも好きで、今までたくさんのフルーツを使ってきたし、何よりも初めて楽市に入ったときの新鮮な果物たちから受けた感動。あの気持ちを忘れちゃってたなんて!
「ありがとう! 梨花ちゃん。私、やる気出た!」
突然がっしりと私に手を握られて、梨花ちゃん、少しだけ引いたような笑顔で「ど、どういたしまして」って言ってた。
エンジンかかるのが遅すぎるような気がしたけれど、研修最後の夜に奮起した私は、青森に来て初めての夜更かしを経験したのでした。