フルブラは恋で割って召し上がれ
「は?」
いつものようにベッドの棚に置いておいたスマホを布団の中から手探りで探し当て、画面を見た私の口からそんな間抜けな声が出てしまった朝。
私、夏目杏花(なつめきょうか)、27歳。いつの間にか、彼に振られてました。
ベッドの上にぺたりと座り込み、何度もメールを読み直す。
もしかしたら、ずーっと下まで改行が続いていて最後に「なーんてね」って書いてあるのかもしれないって思ったけれど、メールの本文はたったの三行。いくらスワイプさせようとしてもテコでも動きやしない。――もっとも、彼はそんな茶目っ気のあるメールをよこすタイプじゃないのは重々承知なんだけれど。
俺たち、もう別れた筈だよね?
もう会わないって言ったのは君の方ですよ?
今更、会いたいと言われるのもメールをされるのも迷惑です
――いつ、別れたっけ? 私たち。
最後に会ったのは先週の金曜日の夜。ケンカ別れをしたのは確か。
でも、今までだって
「じゃあ、もう会うのよすか?」
「わかったわよ! もう二度と会いたいなんて言わないから!」
……なんて売り言葉に買い言葉でケンカするのはいつものことだったから、今回も二、三日過ぎた頃に和也から「ごめん、言い過ぎた」ってメールが来るのを待ってたのに。
もう一週間もメールも電話も来ないから、夕べ私の方からメールしたんだけど、まさかこんな返事が来るとは思ってもいなかった。