フルブラは恋で割って召し上がれ
日が暮れるのが早くなったなぁ……。
六時を過ぎたばかりなのに外はすっかり暗くなっていて、木枯らしが独り身の体の芯にまで吹きすさんで来るよう。
マネージャーを待つ間に、スマホのメールをチェックする。さっき更衣室でやったばかりなのに。
和也からのメールも着信も受け取れないスマホなんて、壊れちゃえばいい。――そして、和也にメールを出せないでいる自分なんて、人魚姫みたいに空気に溶けて消えちゃえばいいのに。
歩道に落ちた街路樹の葉が、くるくると回って私の前を通り過ぎた。空を見上げると、霞んだ空に星はぼんやりと見えるだけ。
「青森ではあんなに星がきれいに見えてたのに……」
樹ファームの懐かしい人たちの顔を思い出したのは、きっと人恋しいからだと思う。
都会で一人暮らしを始めてもう何年にもなるけれど、こんなにも『アパートに帰ると一人きり』ってことを感じているのは今日が最初のことかも。
今更、会いたいと言われるのもメールをされるのも迷惑です
和也からの最後のメールを読み返しても、やっぱり悲しいって気持ちが浮かんでこない。
どうして? って考えることさえしていない。――私って、そんなに情の薄い女だったんだ……って思ってみても、そこで思考がストップして結論が引き出せないままになっている。
「どうしたらいいんだろ……」