フルブラは恋で割って召し上がれ
和也、この間はごめんね。
和也の好きなリンゴでフルブラ作ったよ
明日には飲み頃。仲直りの乾杯しよ
待ってるね
メールボックスの中の送信済みの一番上にあるメールを開いて、しばらくの間、ぼんやりと液晶画面を眺めていた。
このメールを書いたときの私、まさかあんな返事が来るとは思ってなかったんだよね。いつもみたいに仲直りのキスをして、それでまた元通りになれるって思ってたんだよね。
スマホをベッドの上に置いて、私はキッチンの方へと歩いていく。
冷蔵庫の隣にある棚の前にしゃがみ込み、膝を抱えて棚にならべられたガラス瓶の向きを揃えた。
和也がDIYで作ってくれた棚に、和也に教えてもらって作り始めたフルーツブランデー。
だけど、――私のことを好きでいてくれた和也は、もういない。
それなのに、なんで私は和也に返事も書かずにこうしているんだろう?
あまりに突然で、あまりにも想定外すぎて、どうして? って気持ちも、悲しいって気持ちも、泣きたいって気持ちもついてこれないでいるみたい。
抱えた膝に顔をつけてじっと待っていても、涙は全然出てくる気配すらなくて。
空っぽになった心が涙でいっぱいになるまで、私はもうどんなことがあっても泣くことが出来ないような気がした。