夢で逢いましょう
 
 いつもの起床時間よりかなり早い時間ってのがわかる位にピンとした空気の中で、私はたった今まで見ていた夢の余韻でドキドキとはやる鼓動を聞いていた。

 まだ昇りかけて間もないお日様の光は部屋の中に肌寒さを残していたけれど、それに反して私の体はまるでえっちの後みたいに心地よい疲労で火照っている。


 ――なぁんて。
 ごめんなさい、見栄張りました。私、呉地結衣(くれち ゆい)。21歳。彼氏いない暦イコール年齢のモテナイ女ですものっ。
 えっちどころかキスだってまだのキヨラカな乙女であります。


 ころん、と寝返りを打って毛布を掛け布団ごと足の間に挟んでぎゅっと抱きしめてみる。

 ――あぁ、ダメだ。こんなんじゃ夢の中で彼の腕に抱きしめられていたのを再現出来ない。

「ふにゃあぁあああんっ」

 毛布に顔を埋めて身悶えすると、恥ずかしさとやるせなさとで変な声がでちゃった。


 とりあえず、落ち着こう。

 あれは夢なんだから。だって、ほら。ベッドの上にいるのは私ひとり。部屋の中にも誰もいない。

 さっきまで私を抱きしめていた力強い腕も、少し乾いたような唇で体中にされたキスも、私の中に入ってきた……(以下、自主規制)も、みぃんな夢なのよ。

 ――って、改めて独り身の寂しさを痛く実感したのだけれど。一体何だったんだろう? あんな生々しい夢を見るなんて。やっぱり彼氏いない暦が長いせい? 体は正直だな、ってよく聞くアレ?



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