ワインレッド
「なつみ、卒業おめでとう」

ダントツで声がいいわけでもない。
どちらかというとちょっと高めの濁った声だ。

「ありがとう」

そうやって、うつむきがちに答えると苦笑いする。
たぶんこの人は私が思っていることがわかるみたい。
ねぇ、そうでしょ?じゃないとこの4年間…たった4年、されど4年。
あなたに捧げたのです。

「いつ行くの?」
「1週間後」
「急だね…何も言ってくれなかったんだ」
苦笑いの顔を崩す気はないんだろう。
「ごめんね」
さみしい。
「ふふ、ま、しゃーないよ」
笑って言ってるけど、さみしそうな顔しないでよ。
「ねぇ、もうちょっと考えれない?何も今すぐじゃなくてもいいじゃん?」
「ごめん、それはちょっと期待に沿えない…」
「そっか…最後まで菜摘は菜摘なんだな。」
吹っ切れた笑いに変わった。
あぁ、この人と青春を謳歌で来てよかったって改めて思う。

「先輩。別れてください」
「しゃーない。」

それから私たちは別々の道を歩いた。
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