腹黒王子と秘密の契約
「あ〜、お腹いっぱい!」

お腹も満たされて食後にデザートのケーキまでご馳走になったリリーは、アランと店を出るとアパルトマンまでの帰り道をご機嫌に歩いていた。

「おい、危ないぞ。
子供じゃないんだから普通に歩けよ」

縁石の上を、両手を広げてバランスをとりながら歩くリリーはなんとも危なっかしい。

「あのケーキすごい美味しかったよ〜。
アランも食べればよかったのに〜」

「人の話を聞けよな、まったく。
俺は甘いものは好きじゃない」

「え〜、あんなに美味しいのに〜」

「こんな時間にケーキなんて食って、丸くなるぞ」

「だ、大丈夫だもん!た、たまになら…」

「あ、おい!前見て歩けよ!」

ケーキの誘惑に勝てなかったことを見透かされているようで、リリーは焦りながら言い訳する。

すぐ後ろを歩くアランを思いきり振り返ったせいで、リリーはバランスを崩して縁石から足を踏み外した。

「きゃっ」

危うく転倒しかけたところを、アランに腕を掴まれて助けられる。

驚いて身を固くするリリーに、アランは呆れたような声を出した。

「バカ。だから言っただろ」
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