腹黒王子と秘密の契約
「友人に誘われての出席だったので、招待状は持っていないんです…
でも、本当にっ」

「では、ここを通すことはできないよ。
たまに現れるんだよ、クリフォード王子に一目会おうと城を訪ねてくる君のような女の子が。
まったく、今日は忙しくなるっていうのに…
さぁ、もう帰りなさい」

「そんな!違います!
わたしはそんなっ…」

リリーの話をもう聞く気もないのか、近衛兵は一方的に会話を終わらせてしまう。

それでも諦められないリリーが食い下がろうとした時だった。

黒塗りの高級車が一台、リリーのすぐ後ろで静かに停車する。

それを見た近衛兵が急に姿勢を正したことにリリーが驚いて振り返ると、高級車のウインドウがゆっくりと下がっていく。

その車に乗っている人物が顔を出すと、リリーは思わず声を上げていた。

「シルヴィア様!…」

「あら、やっぱりリリーだったのね。
こんな朝早くにお城へ何か用事かしら?」

「あ…はい。そ、そうなんです」

車を降りてきた運転手が後部座席のドアを開けると、シルヴィアは両足を揃えゆっくりと降り立った。

そんな動作ひとつをとっても、優雅で洗練された気品を感じさせる。
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