腹黒王子と秘密の契約
『今度は何してるんだ?
まさか、あんたも城に泊まってたとか?』

『いえ、まさか!
わたしは、昨日のパーティーで落し物をしてしまって…
見つかってないか、今メイドさんに確認していただいているのを待っているんです』

『落し物って?』

『え、あの…
イヤリングを、片方だけ落としてしまって…』

そんなに大切なものなのか、リリーの表情が急に暗くなる。

中庭より少し高い位置にあるテラスに立ち、それきり黙り込んでしまったリリーを、ユアンは見上げるようにじっと見つめていた。

その視線に気づいたリリーはハッとして、取り繕うように話題を変える。

『えっと…確かユアンさん、て呼ばれていましたよね?
ユアンさんは、何をしているんですか?』

『ああ…俺はちょっと仕事、でね…』

『そうなんですか…』

わざわざギルト王国からノルディア城へ滞在する仕事とは何なのか少し気になったけれど、リリーもそれ以上は聞かなかった。

あまり話したくなさそうな様子のユアンに、視線を逸らされてしまったからだ。

『…あんたってさ、俺が誰か知らないんだろ?』

『え?』

突然のユアンの質問の意味がわからず、リリーは首を傾げた。
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