腹黒王子と秘密の契約
「ご、ごめんなさい…」

転びかけて呆然とするリリーの腕を離そうとした時、アランは何かに気づいたように顔をしかめた。

至近距離で怖い顔をするアランに、リリーは怯んだように後ずさる。

「お前…酒臭い」

「え?」

突然のアランの言葉にぽかんと口を開けたまま、リリーは気の抜けた顔をした。

「お酒なんて飲んでないよ?」

「いや、今気づいたけどお前少し顔も赤い。
なんか妙に陽気なのも、酔っ払ってんだろ」

「え〜?」

全く心当たりのないことを言われて、リリーは小首を傾げる。

「今まで仕事してたんだよ?
さっきの夕食でもお茶しか飲んでないもん。
アランだって隣にいたでしょう?」

「けど、お前…」

そこまで言って、アランは考える素振りを見せてから何かに気がついたのか、リリーをジッと見下ろした。

「な、なに?」

「さっき食ってたケーキ、どんなやつだった?」

「え、すごく美味しかったよ。
しっとりしてて、あんまり甘くなくて、なんだか大人の味ってカンジで…
それにすごくいい香りがしてたよ」
< 11 / 141 >

この作品をシェア

pagetop