腹黒王子と秘密の契約
「はぁ……」

その後、玄関ホールまで見送ってくれたメイドにお礼を告げ、リリーは深い深いため息を吐くと重い足取りで城を後にした。

リリーのあまりの落胆ぶりを哀れに思ったのか、対応してくれていたメイドはそのイヤリングが見つかり次第、連絡してくれると言ってくれた。

それでもパーティーから一夜明けた今の時点で見つかっていなかったとなると、この広い城の中、どこで落としたのかもわからないイヤリングが見つかるかは怪しい。

「どうしよう…」

とぼとぼと城門までの道を歩きながら、リリーは頭を抱えて呟いた。

とにかくクレアにもう一度謝って、もし本当に見つからなかった場合は弁償するしかない。

リリーは昨夜自分の耳元を飾っていた、それはそれは素敵なイヤリングのことを思い出す。

キラキラ眩いほどに散りばめられていた宝石は間違いなく、本物のダイヤモンドだった。

弁償するとしても、今後学費も払えなくなるかもしれない貧乏学生の自分がどうやってそんな大金を用意するのか。

どんなに考えても、現実的に不可能に近いだろう。

クレアなら、またきっと気にしなくていいと言ってくれる。

しかし、あんな高価な物を失くしてしまって、そんな簡単には済まされない。
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