腹黒王子と秘密の契約
「別に大丈夫なのに」

「酔っ払って気持ち良くなって縁石の上を歩いてすっ転びそうになったやつは大丈夫じゃないんだよ」

そう言われるとリリーも反論できず、アランに従われるようについて行くしかない。

酔いを覚ますように心地よい夜風を感じながらしばらく黙って歩いていたリリーは、ふと気になっていたことを思い出した。

「ねぇ、アラン。
お店には何か用があったの?」

リリーに尋ねられて、ぴくり、とアランが反応する。

しかしその質問には答えないまま、アランは前を向いたまま歩き続けている。

「ご飯食べに来たんじゃないんでしょ?
お茶飲みに来たの?」

何も言わないアランのすぐ後ろで、リリーはひとりで喋り続ける。

「違うの?」

それでも返事が返ってこないことにリリーは少しムッとして、アランの着ているジャケットの裾を引っ張った。

「なんだよ!」

「だって聞いてるのに答えないから!」

振り返ってむくれているリリーを見たアランは、ばつが悪そうに視線を逸らす。

「お前、少し前までつきまとわれてた男はもう大丈夫そうなの?」
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