腹黒王子と秘密の契約
「なるほど…
それで?容態はどうなんだ?」

「ユアン王陛下の専属執事の方によると、いつもの発作のようなものだと…」

「いつもの発作ね…
わかった。会場への連絡、調整は頼んだ」

「かしこまりました」

トーマスの少し曖昧な説明に、クリフォードは苦笑しながらも指示を出す。

ただ重病ではなさそうだということはわかり、そうすると体調不良の原因が思いあたらないこともない。

昨日のパレードの途中から急に様子がおかしくなり、夜にノルディア城で開かれた晩餐会の時も心ここに在らずといった状態だった。

思いあたるきっかけはひとつしかない。

クリフォードは組んでいた長い足を解き席を立つと、ソファーに無造作に掛けられていたジャケットを手に取った。

「クリフォード様、もうひとつご報告したいことがございます」

「なんだ」

上質な濃紺のジャケットに袖を通しながらクリフォードが応える。

「一昨日パーティーの最中城に迷い込んだ少女ですが、素性が確認できました」

その言葉にクリフォードの動きが一瞬止まる。

そして続きを促すように、鋭い視線をトーマスへ向けた。
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