腹黒王子と秘密の契約
クリフォードが手にしていたのは、宝石が散りばめられた美しいイヤリングだった。

普通なら対になるものがあるはずのそれは、片方だけしかないようだ。

クリフォードのものではないであろうキラキラと輝くイヤリングの持ち主に、トーマスは心当たりがある。

まさかクリフォードが持っているとは思っていなかった。

「クリフォード様、それは…」

「ユアン王陛下に元気になってもらえるかと思ってね」

その言葉だけで全てを察したトーマスは、困ったような笑みを浮かべて息を吐く。

「また何かを企んでいるようですね」

「人聞きの悪いことを言うね。
俺はこの国の為を思って、王子としてやれるべきことをやっているだけだよ」

悪気など全くないというようににこりと微笑むクリフォードに、トーマスはやれやれと小さく肩をすくめた。

王子としての責務を果たすため、時に手段を選ばないクリフォードを右腕として支えてきたトーマスには、クリフォードが今回も思いもよらないことを考えていることは、経験上その表情からわかる。
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