腹黒王子と秘密の契約
「あまり一般市民を巻き込むことはおやめになったほうがよろしいのではないでしょうか」

「巻き込むではなく、協力を仰ぐと言って欲しいな」

トーマスの助言を気にもせず、クリフォードはサラリと流してしまう。

「そのイヤリングもどうするおつもりですか?」

「もちろん持ち主に返すよ。
ただ、どうやってかは考え中と言っておこうか」

トーマスもそれ以上口出しすることはいつものことだと諦めたのか、主人から与えられた任務のために執務室を後にした。

ひとり残されたクリフォードは、手の中のイヤリングをしばらく見つめ、大事そうに胸の内ポケットにしまい込んだ。

あの夜、薔薇の庭園に迷い込んでいたリリーとの不思議な出会い。

コロコロと忙しく変わる表情のリリーの姿を思い浮かべたクリフォードの口元は、どこか楽しそうに、そして優しくほころんでいた。






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