腹黒王子と秘密の契約
小さな店ではあるけれど、満席の状態が続いていた店内も、今は食事を終えてお茶を楽しんでいる客が2組いるだけになっていた。

やっと一息つけるようになったことで、手を動かしながらも話題は自然とワイン祭のことになる。

「今年はギルト王国の国王もやって来ているし、そのせいかもしれないな」

「そうね、昨日の歓迎パレードもこの店まで歓声が聞こえてきてたもの〜」

沿道に溢れた人々の大歓声は、パレードが通ったルートからだいぶ離れているこの店にまで届いていたらしい。

マーカスとヘレンの会話を聞きながら、リリーは昨日のできごとを思い返していた。

結局イヤリングは見つからず、ノルディア城のパーティーで出会ったユアンは信じられないことにギルト王国の国王だった。

家に帰ってからもテレビをつけると歓迎パレードの特集ばかりで、リリーは画面に映るクリフォードとその隣にいるユアンを不思議な気持ちで見ていた。

年も近そうなせいかかなり気軽に話してしまっていたけれど、あまりにも違う世界の人だったと改めて実感している。

クリフォードだけでなくユアンも、どこにでもいるような普通の学生であるリリーが出会えるような人物ではなかったのだ。
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