腹黒王子と秘密の契約
「私達もお店は閉めて、パレード見に行ったらよかったわね〜。
リリーは見に行ったの?」

「…え?」

あまり聞いていなかったリリーは、突然話を振られたことできょとんとした顔をしている。

「どうした、リリー。疲れたか?」

「えっ…全然ですよっ、まだまだ元気です!」

珍しくぼんやりしていつもと様子の違うリリーに、マーカスは気遣うように顔を覗き込みながら声を掛けた。

少し心配そうなマーカスとヘレンの表情に気づいたリリーは、慌てて取り繕うように笑顔を見せる。

「えっと…パレードですよね!
セリーナ王妃がとってもお綺麗で、ドレスもすごく素敵で…
クリフォード王子もやっぱり大人気で、歓声もひときわ大きかったですよ」

「そうよね〜、私もお目にかかりたかったわ〜」

「クレアのおかげで特別席から見られて、すごくラッキーだったんです!」

「あら〜、それはよかったわね〜」

それからも仕事の合間に話を聞きたがるヘレンに、リリーはシルヴィアのドレスの感想などを話していた。

見かけによらず意外にミーハーなヘレンに、一緒に話を聞いているマーカスは苦笑気味だ。
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