腹黒王子と秘密の契約
「でも、ギルト王国の国王があんなに若いなんて知らなかったよ」

「そうね〜、すごく綺麗で大人びて見えるけど、やっぱりまだ男の子って感じよね。
私も少し驚いたわ」

「神秘の国なんて言われてるだけあって、今までギルト王国の国王がメディアに出るなんてことなかったからなぁ」

マーカスとヘレンの話がユアンについてのことになると、リリーはなんとなく会話に入ることができずに、洗い終わった食器を布巾で黙々と拭き始める。

もう会うことはないであろうことはわかっているけれど、短い時間とはいえ、ユアンには将来の夢の話など色々な話を聞いてもらった。

一国の国王相手にとんでもない話をしていたんだと、複雑な心境だった。

ギルト語の勉強をしていたにもかかわらず、その国の国王を知らなかったこともなんとも情けない。

二人の話を聞きながら、リリーはあいまいな笑顔で相づちを打つだけだった。





しばらくすると残っていた最後の客も帰り、あれだけ忙しかったのが嘘のように客足はパタリと途絶えていた。

店を閉める時間にはまだ早いけれど、これからワイン祭のフィナーレの花火が打ち上げられることを考えると、もう忙しくなることはないだろう。
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