腹黒王子と秘密の契約
ところがいつものようにそれぞれがのんびりと片付けを始めていると、店の入り口のドアベルがカランコロンと優しく店内に響いた。
入り口のドアからちょうど背を向けていたリリーは、その音を聞いて反射的に「いらっしゃいませ」と笑顔で振り向く。
いつもならすぐに席へ案内するけれど、目の前に立つ新たに来店した客を見たリリーは、その場でピタリと固まっていた。
スラリとした長身と、切れ長の涼しげな目元には見覚えがあった。
ノルディア城でのパーティーの夜、クリフォードにトーマスと呼ばれていた執事らしき男性。
今はどこから見ても隙のない上品なダークスーツに身を包み、動かないリリーの方へとまっすぐに歩いてくる。
「リリー・キャロル様、お仕事中に失礼します。
私、ノルディア城に仕えている者なのですが、少々お時間頂けますでしょうか?」
「え?…は、はい。
なんでしょうか?」
丁寧な言葉と物腰で尋ねられ、リリーは無意識に姿勢を正しながら答える。
何事かと緊張で身構えたけれど、すぐにある事に気がついたリリーは期待を込めた眼差しで、目の前にいるトーマスに尋ね返した。
入り口のドアからちょうど背を向けていたリリーは、その音を聞いて反射的に「いらっしゃいませ」と笑顔で振り向く。
いつもならすぐに席へ案内するけれど、目の前に立つ新たに来店した客を見たリリーは、その場でピタリと固まっていた。
スラリとした長身と、切れ長の涼しげな目元には見覚えがあった。
ノルディア城でのパーティーの夜、クリフォードにトーマスと呼ばれていた執事らしき男性。
今はどこから見ても隙のない上品なダークスーツに身を包み、動かないリリーの方へとまっすぐに歩いてくる。
「リリー・キャロル様、お仕事中に失礼します。
私、ノルディア城に仕えている者なのですが、少々お時間頂けますでしょうか?」
「え?…は、はい。
なんでしょうか?」
丁寧な言葉と物腰で尋ねられ、リリーは無意識に姿勢を正しながら答える。
何事かと緊張で身構えたけれど、すぐにある事に気がついたリリーは期待を込めた眼差しで、目の前にいるトーマスに尋ね返した。