腹黒王子と秘密の契約
思ってもみなかった返答に、リリーはきょとんとした顔でアランを見ている。

「それって、前にアランがひどいことして追い払ったお客さんのこと?」

「人聞き悪いこと言うな。
全然自覚してないから教えてやるけど、危なかったんだぞ」

「危なかったって、どうして?
確かに少し強引なとこもあったけど、毎日お花をプレゼントしてくれたり、いい人だったと思うけどな」

「下心丸出しで近づいてくる男に、ホイホイついて行きそうになってただろうが」

「ホイホイって…
だってディナーに招待してくれるって言うから」

「お前は飯を食わしてくれる相手なら誰にでもついて行くのか!?」

急に声を荒げたアランに、リリーは驚いて目を見張る。

その反応に、アランは気まずそうに視線を泳がせた。

「いや…あの男は女癖悪いって有名なんだよ…
お前そういうの見抜けないし知らないだろ」

「でも、あのときのアラン怖かったよ。
あのお客さん青くなってたもん。
ケンカはよくないよ、しかもお店の前でなんて」

思い出しているのか、今度はリリーが顔をしかめている。
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