腹黒王子と秘密の契約
「なに?」

「そんな顔するなよ」

「だって、アランが…」

「悪かったよ。
でもあの男と二人で食事なんて危なすぎる。
お前の人を疑ったりしないところとか、誰にでも優しくできるところとか、すごくいいところだと思う。
でも、あまりにも隙が多いから本当に危なっかしいんだって」

完全にいじけているリリーに、降参したようにアランが謝る。

リリーの栗色の瞳を気まずそうに見つめたアランは、どこか困ったような表情をしていた。

「あんまり心配かけるなよ」

「アラン…」

リリーはそこで初めて、アランが店に顔を出した理由に気がついた。

目の前の口が悪くて無愛想な青年の優しさは、本当にわかりづらい。

心配だから迎えに来た、とは言えなかったのだろうか、と苦笑してしまう。

「ありがとう」

「…早く寝ろよ、酔っ払い」

「もう!そんなに酔ってないから!」

不器用な優しさが嬉しくてお礼を言ったのに、アランは憎まれ口を残すと、そのままさっさと部屋の中へ入ってしまった。
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