腹黒王子と秘密の契約
「まったく…素直じゃないんだから」

素っ気ない態度や言葉もアランの赤くなった耳をしっかり見つけていたリリーには、それが照れ隠しなのだとわかってなんだか可愛くすら見える。

そんなことを言ったらまた機嫌が悪くなるのは間違いないから絶対に言わないけれど。

鍵を開けて、部屋の中へ入る前にもう一度だけ振り返る。

後ろを向いていて見えなかったアランの赤面を想像したリリーは、クスッとひとりで笑うのだった。





「あ、おかえりなさーい」

リビングに入ったリリーを迎えたのは、のんびりとした明るい声。

狭いながらもセンスのいいアンティークの家具が揃った部屋で、リリーはその声の主を見つける。

「クレア、ただいま!」

「あら?なんだか機嫌良い?」

「ん?機嫌良いっていうか、今アランと帰り一緒だったんだけどね、ほんと素っ気なさそうに見えて優しいとこあるなぁって思って」

「どういうこと?」

お気に入りの定位置であるソファーに寝そべっていたクレアは、起き上がるとリリーを見上げながら尋ねる。
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